社内報や採用サイトに社員の写真を使うときの同意|入社時の一文では足りない
社内イベントや交流会で撮った写真が手元に集まると、「せっかくだから社内報に載せよう」「採用サイトの雰囲気づくりに使えそうだ」という話になります。
ここで見落とされやすいのが、写真に写っている社員の同意です。入社時の誓約書に一文入っているから大丈夫、と考えられていることが多いのですが、それだけでは足りない場面があります。
この記事は、どこまで同意が必要かの線引きを、実務の順序で整理したものです。
社内だけの回覧でも、同意は必要
まず前提です。社外に出さず、社内での閲覧・回覧にとどまる場合であっても、同意は必要とされています。
従業員や家族の情報を社内報などに掲載する場合、社内や従業員間での閲覧・回覧だけでも、誰を対象に情報が公開されるかを本人に伝えたうえで同意を得る必要があると解説されています。
参考: 社内報に社員全員の写真を載せることの是非|日本の人事部(2026年8月閲覧)
「社内だから問題ない」という整理は成り立ちません。ポイントは公開範囲を本人が把握しているかです。
入社時の包括同意で足りる場合と、足りない場合
多くの企業では、入社時の誓約書に「業務上必要な範囲で氏名・写真等を利用することがある」といった一文を入れています。
ただしこれさえあればどんな写真でも社外に公開してよい、という免罪符にはなりません。採用サイトの社員インタビューなど、本人が大きく取り上げられる重要な掲載では、都度個別同意を取得することが推奨されています。
参考: 従業員の顔写真利用に同意は必要か|日本の人事部(2026年8月閲覧)
実務上の目安
| 使い方 | 目安 |
|---|---|
| 社内報に、集合写真として小さく写る | 包括同意+掲載前の告知でおおむね足りる |
| 社内報に、個人が特定できる形で大きく載る | 個別に声をかけたほうがよい |
| 採用サイト・会社案内など社外に出るもの | 個別同意を取る |
| 本人のインタビューや氏名つきの紹介 | 個別同意を取る |
| SNSで会社アカウントから発信 | 個別同意を取る(拡散が止められない) |
境界は「本人が特定できるか」と「社外に出るか」の掛け算で考えると判断しやすくなります。どちらも当てはまるなら、個別に確認するのが安全です。
同意書に書いておく4項目
同意を取るとき、口頭やチャットの一言で済ませると、あとで「そこまでとは思っていなかった」という話になります。書面に残すなら、次の4つを具体的に書くことが推奨されています。
- 利用目的 — 何のために使うのか
- 掲載媒体 — 社内報か、採用サイトか、SNSか。媒体ごとに書く
- 掲載期間 — 在籍中のみか、退職後も一定期間含むか
- 同意撤回の可否と手続き — やめたくなったとき、誰にどう言えばよいか
参考: 社内報担当者が知っておきたい法律や権利|太平社(2026年8月閲覧)
とくに3番と4番が抜けがちです。ここが空白だと、退職時や本人の心変わりのときに拠りどころがなくなります。
退職した社員の写真は、そのままにできない
見落とされやすく、かつリスクが大きいのがここです。
在職中に掲載の同意を取っていても、退職に際して同意を取り直していない場合、通常は「在籍している間のみ掲載を許可した」趣旨と考えられ、肖像権侵害の可能性が高いと解説されています。
参考: 会社のホームページに従業員の写真を掲載する際の注意点|大堀会計事務所(2026年8月閲覧)
実務としては、退職者の写真は速やかに公開停止・削除するか、在職中の社員の情報に差し替えることが推奨されています。「退職後1か月以内に削除する」といったルールを先に決めておくと運用が回ります。
採用サイトの社員紹介は、この問題が起きやすい場所です。更新が止まったまま退職者が載り続けている状態は珍しくありません。掲載一覧と在籍者名簿を突き合わせる作業を、定期の予定に入れておくのが確実です。
イベント写真ならではの注意点
社内イベントや交流会の写真には、通常の撮影と違う事情があります。
1. 撮影者が社員(または社外の方)
カメラマンに依頼した写真であれば、権利関係を契約で整理できます。しかし参加者がそれぞれ撮った写真は、撮影者それぞれに権利があります。会社が集めたからといって、会社の著作物になるわけではありません。
使うときは、撮影者の許可と、写っている人の許可の両方が必要になります。
2. 社外の方が写っている
交流会では取引先や他社の方が混ざります。その方の所属先にも広報ルールがあります。自社の同意ルールでは処理できません。個別に確認するか、社外の方が写っている写真は使わないと決めておくのが安全です。
3. 撮られたことに気づいていない
イベント中は自然な写真が撮られます。本人が撮られたと認識していない写真は、あとから見せられたときに拒否感が強く出ることがあります。
イベントの開始時に一言アナウンスしておくだけで、この摩擦はかなり減ります。
例:「本日のお写真は、のちほど社内報などで使わせていただくことがあります。掲載を控えてほしい方は、あとからでも構いませんのでお知らせください。」
運用として決めておくとよいこと
毎回判断するのは続きません。先にルールを決めておくと、都度の迷いが消えます。
- 集合写真は可、個人が大きく写るものは個別確認という線引きを決める
- 社外の方が写っている写真は使わないと決めてしまう(判断コストがゼロになる)
- イベント開始時のアナウンス文を定型化する
- 退職者の掲載を見直す時期を決める(毎月の定例に入れる)
- 「掲載をやめてほしい」の受付窓口を明示する
最後の項目は特に効きます。撤回の手段が用意されていると、掲載そのものへの抵抗感が下がります。
写真そのものを長く持たない、という選択
ここまで書いてきた注意点は、すべて「写真を保管し続けること」から生まれます。
イベントの写真を「その場で共有して楽しみ、参加者が各自で持ち帰る」だけにとどめれば、会社として管理する写真が残りません。同意・退職者対応・削除依頼の対応も発生しません。
photoba は、この形に振り切った無料のサービスです。参加者がQRを読んで写真を送ると、その場で会場のスクリーンに表示され、共有アルバムに集まります。保存期間を過ぎると自動的に削除されます。
- 開催日を設定すればその7日後まで。未設定なら「作成から30日」または「最後の写真から7日後」の遅いほうまで(最長でも作成から90日)
- 撮影場所(GPS)などのExif情報は、送信前に端末側で取り除かれます
- 通信先は photoba.app(HTTPS)のみ
社内報などで使いたい写真があれば、期間内にダウンロードし、上に書いた同意を取ってから使ってください。photoba 側に制限はありませんが、権利の整理は利用者側で必要です。
使い方は交流会・社内イベントのページにまとめています。
この記事は公開されている解説をもとに実務上の考え方を整理したものであり、法的助言ではありません。判断に迷う場合は自社の法務・労務の担当者にご確認ください。