ゲストが撮った結婚式の写真、著作権は誰のもの?|659枚を運用した実データつき
ゲストに写真を送ってもらうとき、いちばん整理されていないのが権利の話です。結論から書くと、著作権は撮った本人にあり、肖像権は「撮る」と「公表する」で判断が分かれます。
よくある質問の順に、出典をつけて答えます。最後に、659枚の写真を実際に運用して、権利に関する申し出が何件あったかという数字も出します。この種の実データは公開されていないので、判断の材料になるはずです。
ゲストが撮った写真の著作権は、誰のものですか?
撮った本人(ゲスト)のものです。新郎新婦のものにはなりません。写真の著作権は、原則としてシャッターを押した人に発生します。
見落とされがちですが、これはプロのカメラマンに料金を払った場合も同じです。文化庁は「著作物の創作を他人や他社に委託(発注)した場合、料金を支払ったかなどにかかわりなく、実際に著作物を創作した受注者側が著作者となる」と説明しています。料金の支払いと著作権の帰属は別の話なので、アルバムや年賀状に使う予定があるなら、契約時に確認してください。
身内で見るだけなら、確認は要りますか?
実務上、大きな問題になりにくい範囲です。問題になりやすいのは、集めた写真を印刷物やSNSで広く使うときです。年賀状、フォトブック、お店の紹介ページなどが該当します。
このときは、その写真を撮ったゲストにひとこと確認しておくのが無難です。「送ってもらった=自由に使ってよい」ではありません。
出典: ここが知りたい著作権|文化庁 / 著作権テキスト(令和6年度版)|文化庁著作権課(2026年9月閲覧)
写っている人の同意は、どこまで必要ですか?
「撮る」と「公表する」で判断が分かれます。公表のほうが慎重さを求められます。
最高裁は、人はみだりに自分の容ぼう等を撮影されない人格的利益を持ち、さらに撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も持つ、と判示しています。つまり撮影と公表は別々に評価されます。
どこからが違法になりますか?
一律の線引きはありません。最高裁は、撮影される人の社会的地位、活動内容、撮影の場所・目的・態様・必要性などを総合的に考えて、社会生活上の受忍限度を超えるかどうかで判断するとしています。
- 披露宴の会場で撮る — 参加者が写真を撮ることが想定されている場なので、受忍限度内と評価されやすい範囲です
- 会場のスクリーンに映す — 見るのはその場の列席者に限られます。招待された人の範囲を出ません
- 公開のSNSに載せる — 不特定多数に向けた公表です。ここが最も慎重さを求められます
結婚式には、写真に写りたくない事情のある方が一定数います。お子さんの顔をネットに出したくない方、職場の関係で顔出しを控えたい方などです。「みんな喜んで写る」という前提を置かないほうが安全です。
出典: 最高裁判所 平成17年11月10日 第一小法廷判決(和歌山毒物カレー事件の法廷内写真をめぐる訴訟)。肖像権を定めた条文はなく、判例によって形成された権利です。
写真共有サービスの規約は、権利を誰の責任にしていますか?
利用者側(投稿したゲストと主催者)の責任にしているものが一般的です。サービス側が1枚ずつ権利処理をしてくれるわけではありません。ここは誤解しやすい点です。
たとえば photoba の規約では、禁止事項として「肖像権を侵害する写真」「被写体となる人の同意を得ていない写真」の投稿を挙げています。多くのサービスで共通する整理です。
申し込む前に、規約のどこを見ればよいですか?
- 投稿された写真を、運営が広告や宣伝に使うと書かれていないか
- 写真の権利が運営に移るような条項がないか
- 削除を依頼したい場合の連絡先が示されているか
- アルバムが検索エンジンに載らない設定になっているか
各社の保存期間や料金は写真共有サービス14社の比較にまとめています。
実際のところ、権利のトラブルは起きていますか?
当サイトの運用では、写真の削除依頼は1件も来ていません。ただし母数が小さいので、「起きない」という意味ではありません。数字をそのまま出します。
| 項目 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 投稿された写真 | 659枚 | — |
| AIが表示前に保留した写真 | 2枚 | 0.3% |
| 主催者が削除した写真 | 58枚 | 8.8% |
| 権利に関する削除依頼 | 0件 | 0% |
この数字をどう読めばよいですか?
「配慮しなくてよい」という結論にはなりません。読み方に3つ注意があります。
- 母数が小さい。659枚・17イベントです。1件起きれば数字は動きます
- 申し出の窓口が見つけにくかった可能性があります。問い合わせ自体が全体で0件なので、「トラブルが無かった」のか「言う先が分からなかった」のかを区別できません
- 主催者が削除した58枚の理由は分かりません。テスト投稿の後片付けと、写真の選別と、申し出への対応が混ざっている可能性があります
それでも公開するのは、この種の実データがどこにも無いからです。「権利の申し出がどのくらいの頻度で起きるのか」は、同種のサービスを検討する人が知りたい数字のはずです。数が増えたら更新します。詳しい内訳はイベントで写真は何枚集まるのかに載せています。
当日、何をひとこと言えばよいですか?
開宴前の司会者アナウンス1つで、大半は足ります。参加が任意であることと、写り込みを避けたい人の逃げ道を用意するのが要点です。
アナウンスの例
「本日はみなさまのお写真をスクリーンにご紹介します。ご参加は自由です。写り込みを控えたい方は、お近くのスタッフまでお声がけください。お写真を撮る際は、写る方にひとことご確認をお願いします。」
ペーパーアイテムにも一文添えておくと、アナウンスを聞き逃した方に届きます。
紙に添える一文
※ お写真はスクリーンに表示され、ご列席のみなさまと共有されます。写り込みを控えたい方はお申し出ください。
場面ごとの文例はお願い文テンプレート集にまとめています。
「その写真を消してほしい」と言われたら?
その場で消せる状態を、当日までに作っておいてください。多くのサービスに主催者用の削除機能があります。申し出があったらすぐ消せるよう、管理画面を誰が開けるようにしておくかを決めておくと安心です。
スクリーンからも即座に消えるかどうかはサービスによって挙動が違うので、事前に確認しておくとよいでしょう。
アルバムのリンクは、どこまで広がりますか?
多くのサービスは「リンクを知っている人なら閲覧できる」形式です。つまりリンクが転送されれば、招待していない人も見られる状態になりえます。
パスワードや合言葉を設定できるサービスもありますが、既定では設定されていないことがあります。集合写真やお子さんが写った写真が含まれることを考えると、共有範囲は意識しておく価値があります。
- 合言葉・パスワードを設定できるか
- 閲覧できる範囲を「新郎新婦のみ」に絞れるか
- 検索エンジンに載らない設定になっているか
ゲストがSNSに載せてしまったら、止められますか?
サービスの管理外なので、事前のお願いでしか防げません。ゲストが自分の端末で撮った写真は、共有サービスを通っていないためです。
気にされる場合は、招待状や当日の案内に一文入れておく方法があります。
SNS掲載への配慮をお願いする例
お写真をSNSに投稿される際は、ほかのご列席の方が写っていないかご確認いただけますと幸いです。
強く禁止するより、「他の人が写っていないか確認してほしい」という言い方のほうが受け入れられやすいようです。詳しくは「SNSに上げないで」を角を立てずに伝える方法にまとめています。
まとめ
- 著作権は撮った本人。料金を払っても移りません(文化庁)
- 肖像権は「撮る」と「公表する」で別に評価されます。違法かどうかは受忍限度を超えるかで判断(最高裁 平成17年11月10日)
- サービスの規約は「同意を得る責任は利用者側」としているものが一般的
- 開宴前のアナウンスと紙に一文が、最も効果的な配慮
- 多くのサービスは「リンクを知る人が見られる」形式。共有範囲に注意
- 削除の申し出にすぐ対応できるよう、管理画面を開ける人を決めておく
- 当サイトの実測では、659枚に対して権利の削除依頼は0件(母数が小さい点に注意)
photoba について
この記事の実データは、私たちが運営しているphotobaの実測値です。ゲストの写真をQRコードだけで集めて、その場で会場のスクリーンに表示する無料のサービスです。
- 参加者はQRを読むだけ。アプリのインストールも会員登録もありません
- 位置情報(GPS)などのExif情報は、送信前に端末側で取り除かれます
- AIが表示前に判定して不適切な写真を保留します(判定は完全ではありません)。すり抜けたものは主催者が削除できます
- アルバムはリンクを知っている人が閲覧できる形式で、検索エンジンには載りません
写真は1イベント500枚まで、画質は長辺1600pxに縮小され、式の7日後に自動削除されます。高画質で長く残したい用途には向きません。他社との違いは写真共有サービス14社の比較にまとめています。